「マノロ ブラニク」CEOを務める姪が語る“シューズ界の王様”と“ブレないビジネス”

英国のシューズブランド「マノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK)」は、東京・表参道に日本初の路面店をオープンした。2層からなる同店には1階にウィメンズ、2階に2018年に本格展開を始めたメンズラインをそろえる。メンズ専門の売り場はロンドンのバーリントン・アーケード店に次ぐ2店舗目だ。

表参道店の中に足を踏み入れるとたくさんの新作が出迎え、奥に進むと壁一面にアイコンシューズ“ハンギシ(HANGISI)”が並ぶコーナーに続く。ハイヒールもさることながらキトゥンヒールやフラットシューズに至るまで、靴という小さなプロダクトに“シューズの王様”と呼ばれるマノロ・ブラニクのこだわりが凝縮されている。マノロを支えるのは、姪のクリスティーナ・ブラニク(Kristina Blahnik)最高経営責任者(CEO)だ。姪でありCEOという立場だからこそ語れる「マノロ ブラニク」とは。

一言でいうなら“カラフル”ね。フィルムカルチャーやアートに精通していて“文化の生き字引き”みたいな人。子どものころから彼の知識に触れて育ってきたことは、私の大きな財産になっています。彼ほど好奇心旺盛な人を私は知らないし、彼の好奇心と知識が混ざり合った結果、靴として形になるの。

ファミリー特有の信頼関係があるからやりやすいわ。でも、これは努力して築いたものです。ケンカは……“パッション(情熱)のぶつかり合い”ならあるわ(笑)。でも、情熱がなければ靴はただの物体にすぎないし、情熱があるからこそ靴にキャラクターが出て、オーラが発せられるの。遺跡などは、何百年も前に作られて今もここにあるしこれからもそこにあり続けるでしょう?しかも不思議なエネルギーを発している。「マノロ ブラニク」の靴もマノロ本人やチームの思いや経験がこめられていて、長く残るものであってほしいと願っています。

アジアは今すごく伸びている地域で、日本は太平洋地域を強化する上で重要な国でもあります。むやみに拡大を進めているわけではなく、ファミリーやラブ、パッション、喜び、カラーといったブランドのストーリーを伝えるのに最適な場所に出店しているだけです。

パリのパレロワイヤルに今年の6月末~7月頭をめどに、香港は年末をめどに出店します。そのほかには、まだ進出していない地域への進出も目指しています。立地を考えるときには大通りに面した場所は選びません。訪れた人にくつろいでほしいから、いつも1本奥に入った場所を選んでいます。

メンズラインは、マノロが履きたいから誕生したと言ってもいいわ(笑)。これまでも展開してはいたけど、きちんとスペースを設けて男性に来てもらい、われわれが何をしているかをきちんと見てもらえるようにしました。表参道店のフロアも住みたいくらい素敵ね!メンズももちろん色にあふれていて、一番売れているのは明るいバーガンディー、次はコーラルピンク。まさか自分がアップルグリーンの靴を買おうなんて思っていなくても、なぜか手に取ってしまうの。男性のファッションはまだまだコンサバだけど、少しずつプレイフルになっていると思います。

質を落とさずに軽量化を実現するのはチャレンジングでしたが重要なポイントです。あと、男性は女性以上にディテールにこだわります。一見するとシンプルでクラシックなシューズも色やステッチや釘の打ち方から、パンツの裾がひっかからないようにヒールの内側の角を切り落とすなど、われわれの細かなこだわりに満足してもらえるのではないかと思います。

好調で、オンラインは毎月伸びています。マノロの今のお気に入りは、アッパーをモロッコで手編みしてイタリアで仕上げたラフィアのシューズですが、これはバーリントン店では完売しました。1人で10足購入した人もいるんです。

エレガントでいいものを判断する目が肥えているし、細部に至るまで妥協しない姿勢をとても尊敬しています。それは「スターバックス(STARBUCKS)」の接客に至るまで浸透しています。この美学は他の国では少しずつ薄れていっているので私は日本が本当に大好きなの。

マノロは、プラットホームシューズがはやるずっと前の70年代にはすでにプロポーションが美しくないと判断していましたから、90年代にトレンドとして台頭してきたときも手を出しませんでした。今、スニーカーやアスレジャーのトレンドは一般消費者に浸透したけれど、マノロも私もまだ“美しいスニーカー”というものに出合えていません。今後スニーカーを出す可能性は十分ありますが、それはトレンドに乗ったということではなくて、私たちの美学に基づいた判断になります。

スニーカーがファッションアイテムとして市民権を得たのは、コンフォタブルであることが最大の理由だと思いますが、それはマノロが一切妥協しないことの一つでもあります。たくさんの人がマノロの靴は履きやすいと言ってくれることを誇りに思うし、履き心地に対するこだわりは譲れません。しかし、コンフォタブルな靴を作りたいからスニーカーを作るという選択肢はわれわれにはないのです。

われわれはファッション業界のロビンソン・クルーソーだから、わが道を行くの。ブレないからこそ消費者は信頼してついてきてくれます。それは数字にも表れていて、アメリカを除く全体の売り上げは2009年から5.4倍増で、日本を含めたアジア地域の売り上げは16年と比較すると6%増、日本だけを見ても16年と比較して4%増と伸長しています。

ジムでは履いているわ(笑)。私が普段スニーカーを履かないのは、「ベストな自分」だと思えないから。多数派じゃないことは分かっているけど、スニーカーは私にとって実用品なんです。

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