着想源となったのは、世界で注目される五木田智央。具象的な人物のモチーフを用いつつ、顔面を隠すことで抽象化したシュールな絵画で有名な作家だ。作風の特徴として、大胆なデフォルメやモノクロームのグラデーション、コラージュ的な構成などがある。
今季は、そんな五木田の作品の“奇妙さ(ODD)”の中に存在する“エレガンス”に着目。狂気を帯びたアート性をワードローブに取り入れ、“新たなエレガンス”を探求する。
たとえば、五木田の作品に見られる美しいグラデーションは、端正なセンタープレスパンツで表現。艶のあるオーガンジーを重ねて仕立てることで、あらゆる方向に光を反射させながら、境界線を曖昧にさせた。一緒に提案された2トーンカラーのパッチワークシャツは、五木田のコラージュ作品を思わせる大胆なデザインが印象的だ。
ガラスが砕かれた様子を表現したというトレンチコートも今季を象徴するアイテム。質感や色味の異なる4種の素材、フォルムの異なる109のパーツを組み合わせ、クラシックなトレンチコートに“新たなエレガンス”を見出した。
ばら撒かれたようなドット柄は、今季らしい奇異な表情が魅力。マーメイドスカートや、深いVラインが印象的なシャツなど、女性らしいラインを引き立たせるエレガントなアイテムに落とし込むことで、“奇妙さ”を際立たせているのも面白い。
五木田の絵画に見られる“奇妙さ”と“エレガンス”は、シルエットでも表現されている。クチュール的な感覚を取り入れたテーラードジャケットは、ボディラインをかたどるようにデザイン。ロング丈のワンピースは、肘周りを極端にタイトにしつつ肩周りと袖口をふわりと拡張させ、ユニークなシルエットを作り上げた。
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